
こんにちは。ななうみ(@nana_u_mi)です。
今日は視聴者の方からリクエストをいただきました「武田薬品工業」について解説していきます。武田薬品は高配当株としても人気がある銘柄で、保有している人も多いと思いますが、売上は成長してるけど財務が心配といった理由で購入を見送っている人もいるでしょう。
今日はそうした人の、投資のヒントになると思いますのでぜひ最後までご覧ください。
Youtubeにも動画を載せているので、動画で見たい人はこちらからご覧ください(チャンネル登録してくれたら嬉しい!)。
武田薬品に対する僕のスタンス
まずは、武田薬品に対する僕のスタンスから説明していきます。
実はYoutubeを始めたころに武田薬品の解説は行っておりまして、この時は購入するべきではないと考えておりました。
今回は改めて武田薬品を分析しなおしてみて、ポートフォリオに少量であれば含めてよい。と認識を改めております。
今回は、認識改まったことの説明もしながら解説していきたいと思います。
ちなみに以前に購入するべきではないと考えていたのかを知りたい方は、こちらの動画を参照してみてください。
現状の確認

ということで、まずは現在のチャートから確認していきましょう。
こちらは2021年3月以降の日足チャートになります。
チャートの青い丸の部分ですねこの辺りで株価大幅に下落したことを受けて、僕は購入するべきではないと動画でお伝えしました。
主には主力商品であるEntyvioとVyvanseの特許が遠くない未来切れてしまう、ということとチャートがこれよりも下がるようだとどこまで落ちるかわからないから。ということでした。
しかし、2022年の3月には3244円のラインで反発して上昇していきましたのでチャート的な不安要素はこの時点ではなくなり、問題は新たな主力製品を特許切れ前に用意できるかどうか?という点に絞られる形になったと考えています。
それ以降も、順調に武田薬品の株価は上がっていき現在は4000円を超えるところまで上昇した。
という状態ですね。

ということで、武田薬品は現在新しい主力製品を確保するためにM&Aなども駆使しながら日々研究開発を行っているのですが、M&Aの方針について確認してみましょう。
「FUTURCARE 2025」という中期経営計画において、「創発型革新の獲得」をM&Aの柱のひとつと位置付けており、新しい技術や製品を獲得しようとしているということです。
そして「2025年イノベーション戦略」の中で、「2025年までに、新たな事業の中心となる有望なイノベーションを開発・実現するため、M&Aやアライアンスを含む新規パートナーシップの構築を通じて、選択と集中を実施していく」としています。
とどのつまり、未来発展していくために重点分野を決めてM&Aを実施し、重点分野以外の領域の事業や製品については売却していきますよ。
という方針で運営されております。

そんな武田薬品の買収の主だったところを並べてみるとこんな感じになっています。
とくに有名なのは2018年のアイルランド、Shireの買収ですがそれ以前も以後も複数の企業を買収しているというのがわかります。

ということで、これらの買収を経てキャッシュフローがどの程度強化されたのかを見てみると、2011年に買収したNycomed(ナイコメッド)社は買収金額約1兆円で2017年には負債を完全に返済完了しております。
2018年のShireについてはなぜかChatGPTでは8800億円となっていますが、実際には6兆円かかっているはずです。
この買収によって得られたキャッシュフローの内訳はわかりませんでしたが、希少疾患領域での地位を強化し、収益性の高いビジネスが可能になったとされております。
ちなみに希少疾患領域は武田が注力している分野のひとつですね。
2020年のPRA Health Scienceについては1兆円ので臨床試験のエキスパートとしての地位を強化できたとしています。
個々の買収によってどのくらいキャッシュフローが改善されたかはわかりませんが、収益性が上がったり、業務シナジーのあることは確認できますのでこれらをもって将来的にキャッシュフローが改善されてくることが期待されている状態となります。

臨床研究パイプラインのフェーズ3と申請フェーズの医薬品はこのようになっています。
EntyvioやVyvanseといった主力製品の特許が切れ始めたり、あと数年で切れるという状態ではありますが、新たな医薬品の開発が多く進んでいますのでいく分かは穴を埋めに行けるんだろうという感じですね。
もちろん、これらの医薬品の中にEntyvioやVyvanseと同じくらい売り上げ規模の大きなものがあるのであれば、将来はあまり不安視しなくてもよいのかもしれません。

ただ、医薬品が臨床試験を通過して世に出るには非常に高いハードルがあります。
ということで後期開発段階のプログラムが2022年にどのように進捗したかを見てみると、多くの医薬品がマイルストンを達成している状態となります。
また、マイルストンを達成していなくても試験は開始されているなど比較的順調にプロジェクトが進行していることが確認できるので、買収によってシナジー効果が発揮されている影響かはわかりませんが、研究開発は比較的健全に回っているように見えます。
定量的にはどうか?

ここまでは、武田薬品を定性的な観点から見てきましたが、直近の数字はどうなっているのでしょうか?
2月に発表された決算を見てみると、実効為替レートベースでは売上が14%増加したものの営業利益は13%減少、四半期純利益は18%増加となっております。
ただこれだと為替が邪魔していて成果がちゃんと把握できませんから、赤枠で示したところCERベースの業績を確認してみましょう。こちらは為替変動しないとしたらという計算ですね。
売上高は0.7%減少、営業利益20%減少、四半期純利益4.8%増加となります。
ちょっと売上も下がって利益も振るっていない印象になりますよね。

実はこれにはからくりがあります。
というのも、昨年は事業売却に伴う売り上げが1330億円ほどあったため、見かけ上は昨年の方が数字が良くなってしまうんですよね。
ということで、武田薬品が公開しているCore売上高とCore営業利益を見てみると、Core売上高は14%の増加、Core営業利益は23%増加しています。
本業としての稼ぎは順調に成長している、と見ることができるわけですね。
そして注目していただきたいのがCoreEPSですね。
こちらは本業ベースでのEPSですが525円となっています。
後で出てくるので軽く覚えておいてください。

定性的情報を確認しても、売上収益は前年同期比14%増加。
ただしこれは、前年同期に非定常的な売上収益として計上した日本の糖尿病治療剤の譲渡価格1330億円があったためですよ。と書いてあります。
そのため、事業譲渡益を除いたCore売上高とCore営業利益がプラスになっている状態であれば本業は順調であるとみてよいということです。

地域別の状況も確認しておきましょう。
武田薬品は実は売上の多くをアメリカで生んでいる企業です。
そのアメリカは為替一定で勘定するCERベースでは2.6%のプラス、それ以外の地域も軒並みプラスで推移しております。
唯一日本だけは大幅にマイナスですが、こちらは先ほども出てきた譲渡益が昨年の売上に計上されているためで、それを除けばほぼ前期同等水準ということになります。
この点から見ても各地域で順調に事業成長が続いていることがわかります。

製品カテゴリ単位で見てみるとどうでしょうか。
こちらはCERベースで希少血液疾患、オンコロジー、その他以外はプラスで推移しています。
その他は大幅にマイナスになっていますが先ほどから何度も出てきている昨年の譲渡益が個々に含まれているので、本業ベースでみるとここまでマイナス幅は大きくなりません。
ここでもおおむね本業は順調そうであるということが示されております。

最後に薬品別で見てみましょう。
薬品としては売り上げ規模の大きな3つの製品を確認してみます。
Entyvio、免疫グロプリン製剤、Vyvanseの3つですね。
Entyvioは昨年比のCore CERベースで17.4%増。
Core CERなので本業で為替一定にした時の数字感ですね。

免疫グロプリン製剤はCore CERベースで18.9%増。
VyvanseはCore CERベースで13.5%増ということで、主力製品は軒並み順調に売り上げを稼いでいるということですね。
順調に推移しているんですが、この3つの主力製品のうちEntyvioとVyvanseは2023年、2026年と主力市場のアメリカで特許が切れるということですから、この辺りが将来のネックというところになってきます。

ということで、業績の推移を見ていきましょう。
売上高は長期で右肩上がりを続けております。
その割にEPSはあまり冴えない形になりますよね。
この理由は度重なる買収によって資金が使われていることが原因となっています。
先ほども確認しましたが、買収などを加味しないCore EPSは525円ありましたから、買収に資金を使用せずにプールすることを選べばEPSは大きく跳ね上がる形となります。
EPSに対して配当性向180円は非常に高いと判断できますが、Core EPSで配当性向を算出すると40%行かない水準ですのでそこまで高くはないと考える事もできますね。
ただ、買収することが将来のコア製品を生み出すための投資でありますから、コア製品がつくられたり自社内でのシナジー場十分に効果を発揮して、買収をしなくても将来の事業展開が行える。となるまでは買収は必要になります。
そう考えると、しばらくCore EPSをアテにするということはできませんからこの点は注意が必要です。

配当方針を確認してみると、中間配当と期末配当どちらも90円出して、年間配当金は180円ですと書いてあります。
確かに先ほどの業績推移を確認しても2009年以降はずっと変わらず180円を出していました。
ここ15年近くは何があっても180円出すマンだったので、強固な株主還元の意思があると受け取っている投資家も多いと思います。
しかし、僕はやや懐疑的です。
この方針は公的な設定では期限の設定もなくそれを継続するとも何とも書いてないからですね。
いきなり梯子を外される可能性は排除しない方がいいと思います。
この辺りが、ポートフォリオに入れるとしても比率少な目でと判断している要因となります。

収益性を確認してみると、売上営業利益率は13.5%と高い水準です。
ROEは5%と低め、ROAは2.3%と低めになっています。
営業利益率ベースで言えば高い水準なので大きく問題視する必要はまだないと思いますが、ROEとROAはゆくゆく改善してほしいところです。

キャッシュフローを見てみましょう。
こちらはShireの買収以降、2020年から営業キャッシュフローが大きく成長しています。
投資キャッシュフローがプラスになっているのは前段で話をした選択と集中をするという経営方針のもと、譲渡されたりした事業などでプラスになった点ですね。
経営方針の転換に伴うものなので、方針転換によって営業キャッシュフローが増えたことも加味すれば、過度に不安視する必要はないように思います。
財務キャッシュフローは急ピッチで負債の返済を行っている状態。
ここ3か年で2019年の買収にかかった資金分は返済したって感じですね。
現金比率が少なく不安感はありますが、例えるなら不動産投資家みたいな状態です。
物件を購入して負債が大きい分現金は少なくなっているが、毎年のキャッシュフローは良くなっている。そんな状態ですね。
これを良しとできるなら、武田薬品は購入に値する銘柄だと言えるでしょう。

財務はこんな感じです。
BPSは順調に増加しているものの、自己資本比率は過去と比べると大幅に減少しています。
これはもちろん借り入れなどを含めてM&Aを実施しているためですね。近年は回復傾向ですから大きな問題はなさそうです。
剰余金は近年は一定水準をキープする形になっています。
お金はM&Aに回したいということで、この辺りは経営判断に納得と理解があるなら許容できる形になるかと思います。

冒頭に紹介した動画では、資産のうちのれんが占める割合が多くて嫌だということを話したのですが、その状況は今もあまり変わりないようです。
個人的にはのれんは実体がないという意味であまり資産に占める割合が多いのは嫌だなぁと思っていますから、この点はマイナスポイントだと感じております。

ということで、そんな武田薬品の株価は4276円。
PERは21.7倍と割高。PBRは1.08倍と妥当な水準です。
ただし、多くがのれんで占められていることを考えるとPBRは割高な水準であると判断することもできると思います。
配当利回りは一時期に比べてかなり下がりました。
現在は4.2%となっております。まだまだ高配当株と言える水準ではありますね。

武田薬品の適正株価を計算してみます。
直近20年の平均EPSは128円、適正株価は2288円です。
直近10年の平均EPSは90円、適正株価は1620円。
直近5年の平均EPSは138円、適正株価は2466円となります。
買収などに資金を使っているため、Core 純利益で計算するとまた違った株価が出てくると思います。
今後も株価はおそらく上がっていくんだろうなという予想はしてるんですが、個人的な肌感覚としてはそれでも現在価格はやや割高だと感じます。
事業の継続性が武田薬品の次の稼ぎ頭である医薬品を作れるかどうかにかかっているという状況は変わっていないので、M&Aがうまくいっているという状況は好ましいものの、将来に懸念がないとは言えませんからそのリスクを考慮すると、3600円台くらいがいいなぁって印象です。
利回り4.2%だと他のセクターも考えれば武田よりリスクの低い銘柄もありそうだなって感じますしね。

現在の剰余金で、直近配当を何年支払えるかの計算になります。
こうしてみると、武田薬品は5年と剰余金の余裕があまりないことがわかります。
第一三共は20年で十分な余裕がありますが、エーザイやアステラスは10年前後となっています。
僕が基準にしている15年を下回る企業が多いセクターであることは理解できますが、5年はかなり短いなぁ…という印象ですね。
——
はい、ということで本日は視聴者の方からリクエストをいただきました武田薬品について確認してきました。
なかなか判断が難しい状態ではあるんですが簡単にまとめると、
- 現在のM&A戦略はうまくいっている
- M&Aに資金を使わなければEPSも高く配当性向も余裕がある
- 上手なM&Aに支えられて事業は堅調
- ただし現時点ではEntyvioやVyvanseに変わる医薬品を開発できていない
- その意味で本質的に危機は脱していない
- 株価は期待が入り込んでいてやや割高に感じる
って感じですね。
昔よりは前向きに購入を検討できるようになったとは感じていますが、すごく積極的に買いたいかと言われると個人的には安心感が足りないな…という印象です。
現在の株価が高くて利回りが落ちてしまっているのもネックですね。
リスクがあるならその分リターンがないと嫌だとは思っています。
もちろん、これは僕の感想なので特に株価については賛否あると思いますから、いろんな情報を当たってみなさんなりの正解を見つけていただけたらなと思っています。
ということで、本日の情報がみなさんの投資に役立てば幸いです。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!