
こんにちは。ななうみ(@nana_u_mi)です。
今年もガートナー社から「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年」が発表されました。

こんな感じで悩んでいる人も多いと思いますが、この記事では最新のハイプ・サイクルから
- 外せない3つのテーマ
- 特に重要な6つのテクノロジー
について解説していきたいと思います。
技術のロードマップを知ることで、資本主義社会の大まかな陣取り合戦で少なくとも「大きく外さない」位置取りをできると思いますから、ぜひ最後までご覧ください。

動画もあるので、動画で見たい人はこちらをご覧ください。
ハイプ・サイクルとは何か?

ハイプ・サイクルとはガートナー社が毎年出している「新たな技術や製品が発表されてから安定して世の中に装着されるまでの流れを示した図」になります。
ハイプというのは「大げさな」「誇張された」という意味のある言葉です。
ハイプ・サイクルは5つの期間に区切ることができます。
- 黎明期…技術や製品が発表され、話題になることで期待が高まっていく時期。
- 「過度な期待」のピーク期…期待が先行しすぎて技術や製品の実態との乖離がピークになる時期。
- 幻滅期…先行した期待が打ち砕かれて幻滅し、期待感が失われる時期。
- 啓発期…失われた期待感の中で啓蒙活動を通して徐々にシェアを伸ばしていく時期。
- 生産性の安定期…安定した生産を行えるようになり社会に浸透していく時期。
このような区間に区切ることができます。

一度すごく話題になったのに、急に誰もその話題に触れなくなって…数年後気づいたらみんな使っていた。
みたいなことはよくありますよね。
スキルを磨くにしても、投資判断に活かすにしても、技術や製品の実際の価値というものをきちんと品定めして、世間の期待感に踊らされないように注意したいものですね。
この図を見るときの注意点としては、この図に載ったからと言って必ずその技術や製品が今後のスタンダードになるとは限らないということ。
浸透しないまま消えていくこともあれば、大きすぎる技術概念の場合には細分化されて翌年のハイプ・サイクルに再掲載ということもあります。

このくらいの捉え方の方が使い方としてはベターだと思うぞ。
このブログでは何度も言っていますが、未来を正確に予測することは誰にもできません。
ですから、この資料も未来を考えるうえでのひとつの材料として見るようにしてください。
ハイプ・サイクル2021の注目テーマ3つ
今回のハイプ・サイクルではガートナーから注目の3つのテーマが提示されていました。
そのテーマは
- 信頼の構築
- 成長の加速
- 変化の形成
の3つです。
僕もこの3つのテーマについてはビジネスにおいて、また資本主義社会を生きる個人としても不変のテーマだと思っています。
信頼の構築
会社間であれば信頼を構築できなければ契約することができませんし、個人間でも現状「相手を信用」しているのではなく「中間の業者を信用」している状況です(フリマアプリとか)。
技術がサポートすることで、信頼構築というフェーズの期間を短くしたり、コストを抑えることができればあらゆる契約においてある種最大の障壁がなくなるとも言えます。
成長の加速
企業であれば競合とのビジネスの主導権争いに高い成長性を持つ事は重要だと言えます。
そして、それは個人に落とし込んだとしても同様です。
他人よりも早い段階で様々な技術・高い視座・広い視野・豊富な資金を持つ事ができれば、評価にしても選択肢にしても有利に運ぶことができますよね。
変化の形成
そして変化に強いことです。
製品やサービスを時代に合わせて変化させていくことや、組織の体制やKPIを変化させていくこと、個人であればスキル分野や思考ロジック、行動そのものも変化させていくことが該当するかもしれません。
ですが、多くの場合現状維持バイアスというものが働きうまく変化できません。
また、そもそもプロダクトによっては変化が困難な作りになっているケースもあります。
こうした部分を、技術がサポートできれば生産性や事業の維持、個人のキャリアアップという意味でも大きな意味があるはずです。

でもこうして見てみると、本当に普遍的なことばかりのように思いますよね。なんでこのタイミングでこれらのテーマが注目されているんでしょう?
僕個人としては、不確実性の高い世界において社会の根幹といえるこれらのテーマを技術でどのようにサポートしていくのかを考え直す時期に来ているのかな。というように感じました。
今後は、これらのテーマを兼ね備えながら社会のニーズにいち早く対応していく。そんな姿が企業や個人に求められているのかもしれません。

投資判断に活かすのであれば、ESGの観点でのチェックも忘れるなよ。
ハイプ・サイクル2021で重要なテクノロジー6つ

注目のテーマを確認したところで、今年のハイプ・サイクルにラインナップされた技術の中から、僕が特に重要だと思っているものを6つ紹介していきましょう。
重要なのは図の中で黄色で示した部分
- 非代替性トークン(NFT)
- 分散型金融(DeFi)
- 従業員コミュニケーション・アプリケーション
- コンポーザブル・アプリケーション
- マルチエクスペリエンス
- データ指向ネットワーキング
この6つです。

という人も、できるだけわかりやすく解説するので一緒に確認していきましょう。
非代替性トークン(NFT)
非代替性トークン、別名NFT(non-fungible token)は2021年夏の時点で大きな盛り上がりを見せている技術のひとつです。
ざっくり説明をすると、ブロックチェーンの技術を使ってデジタルデータに唯一性を持たせるというものです。
偽造不可能な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータのことだと思えばOKです。
従来のデジタルデータはコピーし放題だったため、所有者が不明だったり資産としての価値はありませんでした。
しかし、非代替性トークンを使えばデジタルデータのイラストや楽曲(もちろんその他のあらゆるデータ)が資産性を持てるようになります。
実際に、アートや楽曲といった作品がすでに非代替性トークンによって数千万円以上で落札されるなど、大きな話題を呼んでいます。

この技術が普及することで例えば
- ダウンロード販売の書籍やゲームも所有者を切り替えられる(つまり中古販売)ようになったり
- 中古販売されるたびに開発元やクリエイターに収入が入るようになったり
といったことが可能になります。
現在は新品やデータ販売で1次販売されたものがメーカーやクリエイターの収入に入り、中古市場でいくら取引されようがお金になりませんでした。
しかし、今後はひとつの作品が中古市場で流れ続ける限り、メーカーやクリエイターに収入が入り続けるといった世界になる可能性があるんですよね。
これは、メーカーの在り方や資金繰りに大きな影響を与えるとともに、中古市場の活性化など産業構造が大きく変わる可能性があるということです。
現在はアート分野など領域が限られているものの、実装されている分野があるため短期間で社会への影響を与える可能性があります。
その点でも非常に重要視していきたいところですね。

ゲームや映画などをレンタルして、利用日数に応じてクリエイターにお金がはいるなら、ユーザーはより安価に、もしくはより希少性の高いコンテンツを楽しめる可能性がある。
分散型金融(DeFi)

DeFi(ディーファイ:Decentralized Finance)とも言い、この技術もブロックチェーンを利用した技術になります。
現在は金融機関や取引所といったところが金融業界の中心にあって、そうした中間業者が信頼性や安全性を担保する役割を果たしています。
分散型金融ではこうした中間業者をブロックチェーンで代替することで、取引の利便性や透明性を高めようという試みです。
ビットコインも現在は取引所で売買されていますが、本来はビットコインは個人間で送金できるようにするといった思想があるため、分散型金融はビットコインのもともとの思想に回帰するような動きとも言えます。
この技術が浸透すると、融資の仕組みや財布の概念といったものが根本から変わっていくかもしれません。
個人的には、取引履歴がすべて追いかけられるようになることから、現在の社会の中間コスト(税申告や契約書といった非生産事務作業)が削減されていくことに期待しています。
社会に実装されるためには、まだまだ多くの課題(技術的にもだが現社会制度からの移行など)がありますが、社会の大きなテーマのひとつではあるので引き続きウォッチしていきたい技術だと思います。

従業員コミュニケーション・アプリケーション
2020年に突然世界を襲ったコロナウイルスによって、一躍注目のテーマとなったコミュニケーションアプリ。
zoomやslackといったツールに業務上触れた人も多いのではないでしょうか。
僕は仕事がWeb系ということもあって、体感的にはかなり浸透しているような印象ですが、ハイプ・サイクルでは「過度な期待」のピーク期に位置しているということで、今後の動向が気になるところですね。
どこが過度な期待なのか?ということを推察すると
- コミュニケーションアプリがあれば多くの人がリモートワークできるよね
- と思ったけど、思ったよりも意思疎通が難しかった
- ワークショップにはなんか向いてない気がする
といったような、コミュニケーションの粒度や内容によっては「思ったよりも使えない」という印象が広がってきているのが原因じゃないかなという気がしています。
使われ始めているがゆえに、新たな課題が発掘されているといった状況なのかもしれません。
とはいえ、個人的には直近最も力強く開発されていく技術・サービス分野だと思っているので引き続き注目です。

最近ではChatwork(4448)が「利益度外視で売上を上げることに注力するぜ」ということで積極攻勢を仕掛けています。

また、チャットアプリは滞在時間が長いんだからビジネスの起点になる「スーパーアプリ」を目指すことであらゆる業務領域を取り込んでいくんだよ。というビジョンを示すIRが発表されていました。
これを受けて、直近下がり気味だったChatworkの株価は息を吹き返すように爆上げしていました。

経済情報ばかり見ていても気づけない銘柄を見つけたりできるぞ。
コンポーザブル・アプリケーション
コンポーザブル・アプリケーションは「環境変化に強く、設計変更が柔軟にできるアプリケーションを作ろうよ」という設計思想・概念・技術です。
過去のアプリケーションの設計はアプリ全体が巨大な一枚岩のように設計されていて、柔軟な環境変化への対応や、細かな設計変更が困難でした。
例えるならすべての部品がボルトでくっついた巨大な橋のようなイメージです。
ですが、コンポーザブル・アプリケーションは細かく変更可能なユニットを寄せ集めて、巨大なアプリケーションにするようなイメージになります。
飲食店の厨房に入ったことがある人は分かるかもしれませんが、飲食店の厨房はガスコンロユニット、流し場ユニット、食器入れ兼調理台ユニット…といった具合でユニットを組み合わせて作られています。
こうすることで、厨房の広さや調理場の人数、調理する内容によって自由にレイアウトを組むことができるようになっているんですね。
こうした、取り回しの良いアプリケーションを作るということが、IT業界でも目指そうというのがコンポーザブル・アプリケーションの思想です。
実現すれば、
- アプリを修正する際に部分的な改修で済む
- 予想外の個所でエラーを起こす確率も減らせる
といったメリットがあります。
すでに、いくつかの「こういう作りにしたらいけるんじゃない?」というモデルケースは発表されているので、今後数年で汎用的な開発環境や技術が確立されて、コモディティ化するんじゃないかなと思います。
エンジニアやデザイナーは特に注目しておきたい開発概念だと思うので、要チェックです。

マルチエクスペリエンス
現実ではありえない、デジタル世界だからこそ得られる多様な知覚的体験。それがマルチエクスペリエンスです。
マルチエクスペリエンスは範囲が非常に広範なので説明が難しいのですが、身近なもので言えばメールやチャットなどもマルチエクスペリエンスだと言えます。
どこにいてもメッセージを受発信することができるというのは、手紙のやり取りをしていた物理的な社会ではありえない体験だと言っていいでしょう。
イメージしやすい例を出しましたが、こうした体験を発展させた先でどんなことができるのか?が今注目されていると考えると良いと思います。
例えば、僕がマルチエクスペリエンスで期待している分野としては医療分野があります。
AR技術を使ってオペの練習をすれば、
- 手術してぶっつけ本番で学んでいくことは少なくなる
- 練習のために小動物を犠牲にするようなこともなくなる
といったことが期待でいますし
超小型マシンを体内に入れて遠隔操作でオペできるようになれば
- 人間の体を切開しなくても治療できる
- リハビリ期間や退院までの時間を圧縮できる
といった可能性もありますよね。
このような、現実世界では実行ハードルが高い作業をデジタル世界で経験させることで、現実の無駄や苦痛を減らすといったことができる可能性があります。

データ指向ネットワーキング
ネットワークに繋がることのできる機器が爆発的に増えているので、ネットワークを安定的に利用できるようにするために考えられている技術です。
ネットワークに繋がる機器が増えても、受け皿となるネットワークがパンクしていたら誰もネットに繋がることはできませんよね。
この技術はすでに実験段階までは進んでいて、その実験結果としては現状のネットワークの仕様と比べて34%もトラフィックを減らすことに成功したそうです。
現在はIPアドレスという位置情報をベースにした情報のやり取りをしているのですが、データ指向ネットワーキングでは名前ベースの情報のやり取りをします。
語弊があるかもしれませんが、イメージしづらいと思うので超かんたんに説明します。
- 旧来のネットワーク…住所を書いて手紙を送るイメージ
- データ指向ネットワーキング…@xxxといった感じで名前を書いてリプを送るイメージ
詳しい人が見たら何だこの説明?って思うかもしれませんが、ざっくりこんなイメージで掴んでおけばOKだと思います。
現在のネットワークの仕組みを根本から変えることになるので、変化がとても大きいです。
そのため、関連する企業では大きな資金が動くでしょうし、この改修が実現しなければ将来ネットワークに繋がらないといった未来がありえるのでとても重要なテクノロジーだと思っています。

技術を知って未来を想像してみよう
ということでガートナーの発表したハイプ・サイクルの、注目3テーマと重要なテクノロジーを6つ紹介してみました。
他にも気になるテクノロジーは正直いろいろあるのですが、どれか選べと言われたら個人的にはこの6つという感じです。
本当は5つにまとめたかったんですけど、選びきれなくて6つにしました。そのくらい今年のテクノロジーは選定が難しかったです。
まとめると、今年発表されたハイプ・サイクルの技術テーマは
- 信頼の構築
- 成長の加速
- 変化の形成
の3つでした。
社会の根幹に根差した普遍的なテーマだと思うよ~という話をしました。
それらの中で、僕が特に注目しているテクノロジーは
- 非代替性トークン(NFT)
- 分散型金融(DeFi)
- 従業員コミュニケーション・アプリケーション
- コンポーザブル・アプリケーション
- マルチエクスペリエンス
- データ指向ネットワーキング
の6つが重要だと思います。
直近力強く開発されていくだろう物から、長期的に大規模な開発がされるだろうというものを選んでみました。
プレイヤーとして技術を磨きたい、どんな分野で活躍するか選定したいという人はもちろん、どんな技術に力を入れている企業に投資をするか検討したいという人もこれらの技術を意識してみるといいと思います。
ハイプ・サイクルは未来の絶対的な方針ではありませんが、大まかな技術の潮流を見るためには非常に役立つ資料でもあります。
過度に信用しすぎず、未来を想像するひとつの材料として取り入れてみると、将来を描きやすくなるんじゃないかな?と思います。


ハイプ・サイクルって多くの人は見ても「ふーん」って流して終わりだと思うが、技術ひとつひとつが大まかにでもどんな内容なのかを知ることで、将来の方向性が見えてきたりするんだ。


それに、投資を行う時には経済ニュースばかりではなく技術に目を光らせておくことで、他の市場参加者とは違った目線で銘柄を選ぶこともできるようになるだろう。

ですね☆
ということで、今回の解説は終わりたいと思います。
この記事の内容が、少しでもみなさんの役に立てばうれしいです!
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最後まで読んでいただきありがとうございましたー!またねー!