プロダクト改善でデータに頼りすぎるのは危険という話


プロダクトを改善していくとき、それまでに得られたデータを参考にして意思決定をします。

しかし、データを参考にするあまり論理的に判断できることだけに注力するのは危険です。

データはプロダクトのユーザーが残した足跡でしかなく、本当に大切なのはユーザーが何を感じ、何を思ったのかを知ることだからです。

論理的に判断できることは限られている

ビジネスの世界では、論理的に考えて結論を出すことが大切だとされています。

もちろん、僕もこれには賛成です。

論理が破綻している判断よりも、論理として成り立っているものの方が信頼性の高い結論だと思うからです。

ですが、そもそもすべての事柄は論理的に説明できるものなのでしょうか?

データでわかることは考えているよりもずっと少ない

僕たちが日々の仕事で用いているデータは、データとして算出が可能なものに限ります。

プロダクトを利用したユーザーの滞在時間、CTR、スクロール率など、計測する方法があるものだけが我々のもとにデータとして届くのです。

考えてみれば当たり前の話なのですが、データと睨み合いを続けているとどうやらその当たり前の話が頭から抜け落ちることがあるようです。

プロダクトを使っているときのユーザーの感情の起伏や気持ち、画面を見ているときの集中度、デバイスの持ち方、指の大きさ…どれもこれもデータでは見ることができません。

データとして見ることができるものは、見ることができないものよりもずっと少なく、ユーザーの行動のごく一部であることを念頭に置いておかなければなりません。

データで語れることを論拠にして、論理的な仮説を組み立てるわけですが、それだけに頼っていてはユーザーのごく一部の情報をみて、ユーザーは全体的にこうであると言っているようなものです。

わからないことは論理を組み立てにくいですし、データから確証が得られないので後回しにされがちです。

ですが、わからないことよりもわかっていることを優先する妥当性は本当にあるのでしょうか。

限られた情報からはあるべき姿は探せない

得られたデータをもとに仮説を組み立て、確からしい理論と打ち手を考えることに異論はありませんが、それだけに終始するのは問題です。

前述のとおり、得られていないデータの方が膨大にあるからです。

得られるデータというのは、「今実装されているプロダクトの仕組み上得られるもの」なので、実装されていないものについてはほぼ、何も語れていません。

過去から学んで改善することはできますが、実装していないものについては可否の判断すらできないのです。

本当はこういう体験ならいいのかもしれない。とか、別のコンセプトの画面設計ならいいのかもしれない。ということが、データから論理を組み立てて判断するという進め方だけでは実現が難しいでしょう。

機能改善+追加機能になりがちで捨てる判断ができない

データに頼りすぎると大きな改善ができないなんてことはない、うちは機能追加していってますよ。

という人やチームもあるかもしれません。

機能追加は足りないものを補う思想なので、できるんです。

機能削除や要素を削る作業はしていますか?

データだけを見て判断していると「2%のユーザーが使っているから、簡単に削除はできない…」と、判断していることが往々にしてあります。

本当は、その機能を削除すればさらに3%のユーザーが幸せになる可能性があるのにです。

チャレンジする前から諦めてしまいがちになるのも、データ偏向のよくない点だと僕は思っています。

結果、膨大な追加機能にまみれたサービスが完成する

上記のように、画面の最適化や機能の削除を行わずに追加回収を繰り返していくとどうなるか。

誰でも予想が付く通り「100徳ナイフ」が完成します。

100徳ナイフとは何ぞや?という人は調べてみてください。

100徳ナイフは非常に機能が豊富で、あらゆるシーンに対応できますがあらゆるシーンで使いづらいプロダクトです。

こうしてみていくと、おそらく多くの人が、100徳ナイフを使うよりなら便利に使える道具を2つ3つ持ち歩くことを選ぶでしょう。

プロダクトの話に戻れば、データだけに頼ったプロダクト改善や機能を追加するだけの改善を重ねていくと、ゆくゆくコンセプトがシャープな特化プロダクトに打倒される未来が見えるのではないでしょうか。

プロダクトがつぶれる未来を見たくて改善しているわけではないはずなので、100徳ナイフを回避して、データだけに偏りすぎずに意思決定するにはどうしたらいいかを模索するのがよいかなぁと思っています。

データ以外にも頼れるものを用意しよう

データだけに頼らずにほかにも頼れるものを用意することで、プロダクト改善は安定していくと思っています。

おすすめの方法が2つあります。

ひとつはユーザーテストをすること。

ユーザーテストは方法がいろいろあると思いますが、個人的にはプロダクトやプロトタイプを触ってもらって、それを録画してどの画面で止まったのか、どの画面で離脱したのかなどを見ること。

データでは見えない、戸惑いや、いら立ちや、迷いを拾いやすくなります。

もうひとつが、プロダクトで実現したいものに立ち返ること。

肥大化していくプロダクトも、実は最初はシャープなコンセプトで機能の少ない作りだったりします。
その頃のシャープなコンセプトに立ち返って、そのコンセプトを支える体験や機能、必要な画面やUIを考えていくとヒントが見つかったりします。

原点に帰ってプロダクトを見つめ返すことが、なんだかんだで大切だと思います。

実現したい社会があって、それを叶えるためにプロダクトを作っている。

そうした意識がデザインや開発の現場に芽生えるきっかけになれば嬉しいです。