
こんにちは。ななうみ(@nana_u_mi)です
今日は本日決算発表のあった、伊藤忠商事と丸紅について解説していきます。
事業成長が安定している総合商社、高配当投資家には人気のある銘柄だと思います。
今日の決算では、どちらの銘柄も安定した事業成長が確認でき、非常に好調な決算だったと思います。

Youtubeにも動画を載せているので、動画で見たい人はこちらからご覧ください(チャンネル登録してくれたら嬉しい!)。
伊藤忠商事

まずは、伊藤忠商事から見ていきましょう。今回は第3四半期の決算です。
累計の連結最終利益は前年同期比0.5%増ということで、数字的には大きな変化がなかった形となります。通期計画に対する進捗率も5年平均とほぼ同等の85.3%となりました。
直近3カ月間の最終利益は前年同期比12%増ということで、足元業績は調子がいいように思います。

決算のポイントとしては、
- 純利益は昨年と大きく変わらないものの、多額の一過性利益がのっかっていた昨年を超える水準の利益を残せている
- 基礎収益は円安の影響があったものの、機械、エネルギー・化学、住生活を中心に事業が伸長して着実に利益を積み上げられた
- 実質営業CFは前期から10%以上伸びて過去最高だった
などがあげられます。
ということで、決算サマリーの数字だけ見るとパッとしないように感じます。
しかし、一過性の利益で盛り上がったのが昨年であり、今期は基礎的収益が伸びて調子が良かったということで非常に好調だったことがわかります。
一過性損益の剥落額を見ると810億円ということで、これだけを基礎収益で賄えたことは素直に評価したいところです。

セグメント別の状況を確認してみると、
- 繊維は一過性のマイナスがありましたが前期比プラスで問題なし
- 機械は一過性のプラスがありましたが、それを差し引いても前期比プラスで問題なし
- 金属は一過性のマイナスがありましたが前期比プラスで問題なし
- エネルギー・化学品は一過性のマイナスがありましたが前期比プラスで問題なし
- 食料は一過性のプラスがありましたが、前期比マイナスとなっていて苦戦中。
理由はインフレによる需要低迷、物流コストの上昇、畜産業の採算悪化、金利上昇による利息の増加などがありシンプルに苦戦しています。 - 住生活は一過性のマイナスによって前期比マイナスですが、一過性のものを考慮しなければ前期比プラスで問題なし。
- 情報・金融は一過性のマイナスもあったうえに考慮外にしても前期比マイナスで苦戦中。
取引は堅調に推移していますが、人員確保による先行投資があったことや株式の評価損悪化、携帯事業の取り込み損益の減少、前期の一過性利益の剥落が原因となっています。 - 第8セクターは一過性のマイナスによって前期比マイナスですが、一過性のものを考慮しなければ前期比プラスで問題なし。
- その他は一過性のプラスはありましたが、それを差し引いても前期比プラスで問題なし
といった形です。
全体的には調子がいいので、食糧と情報・金融だけがちょっと不振といった形です。
総合商社は様々な商品を扱うことで年次の業績のブレをマイルドにしているので、ある程度不振な事業が出てくるのは当然で、許容できる範囲だと思います。

基礎収益の内訳はこのようになっていて、為替による影響が結構大きいということがわかります。
資源分野においては為替の恩恵がなければ前期比でマイナスだったということもわかりますね。
非資源分野も合わせた合計では為替影響がなかったとしても前期比プラスですので、この点は良かったんじゃないかと思います。

業績の前提条件はこのようになっていて、為替の期中平均レートは135円ということでおおむね想定通りです。
金利は想定よりいずれも低いということで今のところは想定どおりか、それより良い環境でビジネス展開できている形になります。

株主還元方針はこのようになっていて、140円の配当を下限として余裕があればプラスしていく方針です。
ステップアップ配当を方針として掲げているので来期は今期の配当以上が約束されているということで、この点も安心感があります。
配当性向は30%でコミットしています。
自己株式の取得についても250億円分の追加取得を決定し、今期の総還元性向は6%上昇の33%になる見通しです。

ということで、動画撮影時点の株価は4018円。
PERは7.3倍と割安。PBRは1.24倍とやや割安から妥当な水準です。
配当利回りは3.48%ということで、税引き後で3%残りませんが市場平均よりは高配当となります。

業績の推移はこのようになっていて、売上高だけを見ていると20年前の方が数字上は良かったりするのですが、最終益ベースで見てみると年々業績が良くなってきているのがわかります。
近年は売上高も回復傾向にあり、直近の業績は安定しているとみてよいでしょう。

収益性はこんな感じで、売上営業利益率は10%に届いておらず低く見えますが、総合商社の中ではトップクラスに利益率がいい企業となります。
ROE17%、ROA6%ということでこちらの数値は高い水準となります。

財務は、BPS、自己資本比率、剰余金が順調に増加していて問題ありません。
自己資本比率が目安となる40%を下回っていますが、総合商社はどこもこのくらいの水準ですし、順調に伸びてきているので今時点では特に大きな問題はなさそうです。
事業も多岐にわたっているのでその分リスクヘッジができているわけですし、極端に倒産リスクが高いという判断はしなくてよいでしょう。

適正株価を確認してみます。
過去20年の平均EPSは195円、適正株価は3483円となります。
過去10年間で見てみると平均EPSは287円となり、適正株価は5140円。
過去5年間で見てみると平均EPSは381円となり、適正株価は6813円となります。
直近20年の水準よりは株価高いですが、過去5年10年の業績推移を評価して株を購入するのであれば、まだまだ安いと判断できそうです。

現在の剰余金で直近配当をあと何年支払えるか?を計算してみました。
伊藤忠は25年間、配当金を支払うことが可能なようです。十分な期間分の蓄えがあるように思います。
他の総合商社も計算してみましたが、三菱商事、三井物産が26年と長いもののほぼ同等の水準であることがわかります。長期間安定して配当を出し続けられる企業だと思います。
丸紅

続いて丸紅を確認してみましょう。こちらも第3四半期の決算ですね。
累計最終利益は前年同期比41.5%増ということで絶好調な模様です。
通期予想も約4%上方修正したということで、順調に事業成長できているようです。
業績好調に伴い、今期の年間配当金を75円から78円に3円増配ということで、こちらも素晴らしい内容となっております。

第3四半期決算のサマリーになります。
- 非資源分野が増益を牽引し、純利益・実態純利益の過去最高を大幅に更新
- 11月4日に発表した純利益の見直し水準に対する進捗率は91%
- 第3四半期に穀物事業を売却していること
- 基礎営業CFは過去最高を達成
となっています。
実態純利益というのが聞きなれない言葉だと思いますが、これは純利益から一過性の損益を除いたものとなってまして、伊藤忠の基礎収益とほぼ同等だと思ってもらっていいと思います。

2022年度通期の見通しとしましては11月4日に発表した業績予想をさらに上振れて上方修正しております。
実態純利益プラス300億、基礎営業キャッシュフロープラス100億となっております。
株主還元方針も新たに策定されているということで、後で確認していきましょう。

セグメント別の状況としてはこのようになっております。
実態純利益の方が重要だと僕は考えてますのでそちらを見ていきますが、食料第二とフォレストプロダクツの利益が割合大きく下がっております。
その反面、金属・エネルギー・電力・金融とそれなりに好調なセグメントもあり、これらで食料第二とフォレストプロダクツのマイナスを補っている状態です。
伊藤忠のところでも話をしましたが、手広く商売することで全体の業績の動きをマイルドにしているのが総合商社なのでトータルプラスであれば問題ないと考えます。

そして、新しい株主還元方針についてです。
たぶん、今日の記事で一番熱い部分ですね。
新方針としては、配当の基本方針が
- 長期的な安定配当を行う
- 中長期的な利益成長により増配する
とされており、各期の業績に連動して増減配を繰り返すスタイルから一新されております。
見方を変えれば短期的な配当利益の最大化はされなくなるわけですが、個人的にはガチホする分にはむしろ安心感がある方針だと感じております。
そして、さらに個人的に評価したいポイントなのですが年間配当金78円を下限として累進配当を行いますということで、買った時の利回りが保証されるということで安心して長期保有できる株になったのは非常にポイントが高いと思っております。
従来は機動的な自社株買いやりますよと書いてあったところも、数値として目安が設定されまして、総還元性向30~35%を目安に自社株買いやります。
ということなのでここもポイント高いですよね。
現時点の配当性向が25%だとして、今後利益成長に伴って増配するということであれば、配当性向変わらないと仮定しても毎年還元性向5%~10%程度の自社株買いをしていく計算になるので株価の上昇も期待できておいしい銘柄なんじゃないかと思います。

そんな丸紅ですが動画撮影時点の株価1646円です。
PERは5.3倍で割安。PBRは1.02倍で割安となります。
配当利回り4.74%で、累進配当銘柄の中でも結構高い部類に入るんじゃないかと思います。

業績推移はこんな感じで、売上高は過去の方が数値が良かったりするんですが、利益面では近年の方が安定している形になります。

収益性はこのようになっていて、営業利益率はやはり低いのですが、ROEは19%、ROAは6%と非常に高いのが特徴です。

財務はBPS、自己資本比率、剰余金共に増加傾向となっております。
自己資本比率はやはり40%に届いていませんが、順調に自己資本比率が上がってきていますし、事業そのものがリスク分散されていますので過度に心配する必要はないと考えています。

適正株価を見てみると、
過去20年の平均EPSは87円、適正株価は1568円です。
過去10年で見たときの平均EPSは113円、適正株価は2033円。
過去5年で見たときの平均EPSは140円、適正株価は2517円となります。
(画像の発行済み株式数が間違っていて、平均EPSと適正株価はこちらのテキストが正しいです)
直近10年の業績が、今の丸紅を表していると感じますので、この水準で見るとまだまだ割安と思ってよいでしょう。

剰余金だけで直近配当を何年支払えるかの計算になります。
こちらは丸紅が16年。他の総合商社は25年前後のところが多いですから、同業他社と比べれば配当の維持可能性はやや低いと言えるでしょう。
とはいえ16年あるので余裕がないというわけでもないように思います。
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ということで本日は今日決算発表のあった伊藤忠商事と丸紅について決算内容を確認してきました。


ということで、本日の情報がみなさんの投資に役立てば幸いです。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!